教育環境観測所

3・11以後、生き方を見直しました。自然災害と放射線の低線量被爆にさらされた地域に根差した生活をやっていきます。教育と環境の視点で試行錯誤しながら。

田園の憂鬱(2012/8月)

 

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 水田が濃い緑に染まり青空には入道雲が沸き立つ8月。夏の原風景です。

すくすくと育つイネの生育が豊かな収穫を期待させてくれる田園風景。

少年時代のこんがり日焼けた肌の色と草花の鮮やかな原色で彩る懐かしい

舞台の風景です。そして、当観測所の教育・環境の原点でもある風景です。

しかし、そこにエンジン音がとどろき、農薬特有の臭気とともに白い

煙霧が登場。農薬散布です。最近は、無色透明、臭いも少ない液状や粒状

の農薬が無人ヘリコプターによって出没します。のどかな田園は突然の

農薬の乱入によって、憂鬱なる風景へと変わってしまうのです。

農薬などの化学物質による健康被害は、放射線の影響と同様に、見た目

にわかりにくい、環境の悪化という形で忍び寄る問題です。

特に、カメムシ防除に代表される害虫防除対策は本来の田園の

生態バランスをも著しく崩しているようでとても心配です。

低線量放射能汚染と農薬による化学物質曝露というダブルパンチでは、

わが原風景の再生への道のりは相当に険しいと言わざるを得ません。

 

JAにはあらかじめ以下のような質問をして回答をもらっていました。

■無人ヘリコプターによる農薬散布の予定についてお知らせください

 1 特定できる場所名(住所)は?

2 2012年の実施日と時刻は?

3 散布する農薬名(形状)は?

4 散布する農薬の量は?

5 散布責任者名は?

6 路上作業やヘリの発着等の安全対策は?

7 上記散布計画の近隣住民への事前通知の方法は?

担当者が来訪し説明していただきましたが、具体的な回答はありませんでした。

8月中に2回実施(日時は天候により未定)し、住民への通知はしないとのこと

でした。

 

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 そして、今年もやっぱり20128月に2回、近隣の水田管理を委託されている

JAが発注した業者がヘリコプター散布をしました。

■「栗原の稲作通信」平成24年第7号(平成24723日)より

病害虫防除対策 ・・・ 斑点米カメムシ類

    斉草刈の実施水田

 畦畔及び周辺雑草地・牧草地の草刈を出穂10日前までに行う。

    穂期前後の草刈自粛

7月30日(月)から8月24日(金)までは草刈りを自粛する。

    田内雑草の除草

5年平均特にイヌホタルイやヒエは,カメムシを呼び込みやすいので除草する。

穂揃期とそれから7~10日後の2回,地域の計画に従って薬剤防除を実施する。

1回目…スタークル粉剤DLスタークル液剤10スタークルメイト液剤10

2回目…ダントツ粉剤DLダントツフロアブルダントツフロアブル

 

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 法制度上、以下の通達が参考になります。

■ 農水省環境省の通知より

18消安第11607号 環水大土発第070131001号 平成19131より抜粋

都道府県知事・政令市長殿

農林水産省消費・安全局長 環境省水・大気環境局長宛

 

住宅地等における農薬使用について

農薬は、適正に使用されない場合、人畜及び周辺の生活環境に悪影響を及ぼす

おそれがある。特に、学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹

並びに住宅地に近接する農地(市民農園や家庭菜園を含む。)及び森林等において

農薬を使用するときは、農薬の飛散を原因とする住民、子ども等の健康被害が生

じないよう、飛散防止対策の一層の徹底を図ることが必要である。このため、

農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令

(平成15農林水産省環境省令第5号)

第6条において、「住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地において農薬

を使用するときは、農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じるよ

う努めなければならない」旨規定するとともに、

「住宅地等における農薬使用について」

(平成15年9月16日付け15消安第1714農林水産省消費・安全局長通知)

において、住宅地等で農薬を使用する者が遵守すべき事項を示し、関係者への指導

をお願いしてきたところである。・・・中略・・・

                  記

住宅地等における病害虫防除に当たっては、農薬の飛散が周辺住民、子ども等

に健康被害を及ぼすことがないよう、次の事項を遵守すること。

(1)  農薬使用者等は、病害虫やそれによる被害の発生の早期発見に努め、

病害虫の発生や被害の有無に関わらず定期的に農薬を散布するのではなく、

病害虫の状況に応じた適切な防除を行うこと。

(2)  農薬使用者等は、病害虫に強い作物や品種の選定、病害虫の発生しにくい

  適切な土づくりや施肥の実施、人手による害虫の捕殺、防虫網等による物理

的防除の活用等により、農薬使用の回数及び量を削減すること。特に公園等

における病害虫防除に当たっては、被害を受けた部分のせん定や捕殺等を優

先的に行うこととし、・・・中略・・・

(3)農薬使用者等は、農薬取締法に基づいて登録された、当該防除対象の農作

物等に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法(使用回数、使

用量、使用濃度等)及び使用上の注意事項を守って使用すること。

(4)農薬使用者等は、農薬散布は、無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に

影響が少ない天候の日や時間帯を選び、風向き、ノズルの向き等に注意する

とともに、粒剤等の飛散が少ない形状の農薬を使用したり農薬の飛散を抑制

するノズルを使用する等、農薬の飛散防止に最大限配慮すること。

(5)農薬使用者及び農薬使用委託者は、農薬を散布する場合は、事前に周辺住

  民に対して、農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類について十分な周

知に努めること。特に、農薬散布区域の近隣に学校、通学路等がある場合に

は、当該学校や子どもの保護者等への周知を図り、散布の時間帯に最大限配

慮すること。公園等における病害虫防除においては、さらに、散布時に、立て

看板の表示等により、散布区域内に農薬使用者及び農薬使用委託者以外の者が入

らないよう最大限の配慮を行うこと。

(6)農薬使用者は、農薬を使用した年月日、場所及び対象植物、使用した農薬の種

  類又は名称並びに使用した農薬の単位面積当たりの使用量又は希釈倍数について

記帳し、一定期間保管すること。

・・・以下略・・・農薬の現地混用による危害等

 

 上記「通知」に対して、民間団体が取り組んだ要請活動からの抜粋です。放射能汚

 染が現実の事態となってしまった今、関連する環境政策の徹底が必要です。

■「これだけは、通知に入れてほしい内容」反農薬東京グループのホームページより

・・・飛散防止措置についてより具体的な記載をし、遵守を求める表現に変える。

<理由>

「農薬を使用する者が遵守すべき規準を定める省令」には、第六条(住宅地等におけ

る農薬の使用)の規定があるが、これは、努力規定であり、住宅地での農薬使用者に

は、農薬が飛散することを防止するために必要な措置をより具体的に通知で示し、

罰則はなくて・・・通知の表現をより厳しく変えて、遵守させるべきである。

現行通知の1(4)にある『農薬使用者等は、農薬散布は、無風又は風が弱いときに行う

など、近隣に影響が少ない天候の日や時間帯を選び、風向き、ノズルの向き等に注意

するとともに、粒剤等の飛散が少ない形状の農薬を使用したり、農薬の飛散を抑制す

るノズルを使用する等、農薬の飛散防止に最大限配慮すること。』としか記載がない

ので、通知で「農薬の飛散防止のために必要な措置を講じなければならない」とし、

より具体的な記載をする必要がある。

そのため、以下の安全確認と飛散防止の措置をしなければ、散布してはならないこと

とする。

・近隣に影響が少ない天候の日や時間帯を選ぶこと。

・周囲の安全を確認できる明るさがあること。夜間の農薬散布は禁止する。

・無風又は風が弱いとき(風速1/秒以下)に行うこと。

・利用者や通行人等周辺に人がいないこと。

・散布地周辺の住宅の窓があいていないこと。洗濯物がでていないこと。

・プールや井戸、農作物等に覆いがかけられていること。

・遊具、自転車、自動車等がないか、または覆いがかけられていること。

・散布方向は住宅等に向けないこと

・農薬の飛散を抑制するノズルを使用すること

・ノズルにカバーを装着して散布すること。

・ノズルを上に向けないこと