今夏の猛暑を受けて、宮城県内の自治体が相次いで予算化している小中学校へのエアコン設置を巡り、設備業界に懸念が広がっている。降って湧いた特需を歓迎する向きがある一方、「業界の能力を明らかに超える」と先行きを不安視する声が続出。多くの市町村が掲げる来年夏までの設置に「到底無理だ」と悲鳴も上がる。

 県内の設備業界の関係者は、エアコンを据え付ける教室数を1万超とみる。今後の維持管理や定期的な更新も見据え、「東日本大震災の復興事業が落ち着く中、業界にとってはありがたい話だ」と本音を漏らす。
 「授業中は作業ができない。そもそも土日は校舎内に入れるのか」。仙台市内の業者は、設置箇所の大半が使用中の教室になることに伴う作業時間の確保を懸念。「民間施設と比べて条件が悪い」と頭を抱える。
 校舎によって異なる建物の築年数や構造などに対応し、天井からの吹き出し型や壁掛け型といった形式を選択する必要がある。
 同市の設備設計事務所の担当者は、取り付け箇所の調査は建築や電気、機械の資格を別々に持つ3人が1組になって臨む必要があると説明し、「30教室ある学校を調べるとしたら半日以上はかかる」と言う。
 約3900教室を抱える仙台市教委が設置箇所の調査・設計に向けて動きだしたことを受け、「業者の抱え込みが始まった」(県職員)。別の設計事務所の担当者は、大手から「手伝ってくれないか」と打診があったことを明かし、「技術的に難しくはないが、他にも業務を抱える中で専念できるはずもない」と諦め気味だ。
 東京五輪パラリンピックを約2年後に控え、都内では宿泊施設などの建設ラッシュが続く。仙台市内の別の業者は「技術者は既に東京に流れている。復興工事で業者が足りなくなった二の舞にならないか」と気をもむ。
 「各自治体の発注時期が重なれば、入札の参加者や落札者がゼロになる事態も起きかねない」(県幹部)と案じる声も上がるが、県教委施設整備課の相馬義郎課長は「各市町村にはそれぞれの考えがあり、県が立ち入ることはない」と静観の構えを崩さない。

[小中学校へのエアコン設置]全国の公立小中学校の熱中症対策として、空調設置支援費817億円を盛り込んだ国の2018年度補正予算が11月7日、国会で成立した。今後、各自治体への配分額などが決まる見通し。18年9月現在の宮城県内の小中学校の設置率は普通教室4.7%、特別教室12.9%。